◆性別推定:寛骨

●性別推定:寛骨

 性別推定で一番信頼性が高い部位は、寛骨です。それは、寛骨は女性が子供を産める構造になっているからです。この寛骨は、腸骨・坐骨・恥骨の3つの部位からなります。また、左右寛骨と仙骨で骨盤を構成します。

・寛骨臼

 寛骨臼は、大腿骨の骨頭が入る部分です。一般的に、男性の方が大きいため、この寛骨臼も男性の方が大きく、女性の方が小さい傾向にあります。

・恥骨

 恥骨は、女性では華奢で細長くなっていますが、男性では頑丈で短い傾向にあります。

・大坐骨切痕

 大坐骨切痕は、遺跡出土人骨でも性別推定に最も有効な部位です。男性では鋭角で小さいのですが、女性では鈍角で約90度近く開いています。

・前耳状面溝(耳状面前溝)

 前耳状面溝は、一般的に女性にのみ認められる溝で、特に妊娠及び出産に関連していると言われています。

Builstra & Mielke (1985)より改変して引用
Builstra & Mielke (1985)より改変して引用

●性別推定:寛骨の中でも恥骨

 寛骨の中でも、恥骨のみの非計測的形質に注目して性別推定を行った研究もあります。これは、フィーニス(T. W. Phenice)が1969年に発表した方法です。

 女性の寛骨の恥骨には、腹側弧・恥骨下陥凹・内側隆線が認められるものの、男性にはこれらの特徴が認められないというものです。

 

*Phenice, T. W. (1969)

A newly developed visual method of sexing the os pubis.

"American Journal of Physical Anthropology"

30: 297-302

Buikstra & Mielke (1985)を改変して引用
Buikstra & Mielke (1985)を改変して引用