◆非計測的形質・形態小変異
▲非計測的形質は、別名、形態小変異とも呼ばれます。
■非計測的形質:頭蓋骨
非計測的形質で著名な論文に、ベリー&ベリー(1967)があります。頭蓋骨の非計測的形質(頭蓋小変異)の内、30項目を選んで集団間で比較したものです。以下は、「Journal of Anatomy」のバックナンバーへのフリーリンクです。
*Berry, A. Caroline & Berry, R. J.(1967)
'Epigenetic variation in the human cranium', "Journal of Anatomy", 101(2): 361-379
●前頭縫合[Metopism](No.6)
前頭縫合は、通常、約2歳で癒合して消失しますが、まれに、成人になっても残存している場合があります。
●前頭骨側頭骨接合[Fronto-temporal articulation](No.9)
通常、前頭骨は、側頭骨との間にある蝶形骨の大翼と接合しますが、稀に、前頭骨と側頭骨が接合する、前頭骨側頭骨接合が認められる場合があります。
●頬骨顔面孔[Zygomatico-facial foramen](No.25)
頬骨顔面孔は、頬骨に認められ、頬骨神経の頬骨顔面枝が通ります。通常は、1個認められますが、稀に複数存在したりあるいは認められない場合もあります。
●眼窩上孔[Supra-orbital foramen](No.26)
眼窩上孔は、眼窩の上にある孔で、眼窩上神経が通ります。通常は、孔にならず、眼窩切痕と呼ばれる切れ込みになっています。
●前頭孔[Frontal foramen](No.27)
前頭孔は、眼窩切痕あるいは眼窩上孔の横に認められる場合があります。
●副眼窩下孔[Accessory infra-orbital foramen](No.30)
眼窩下孔は、上顎骨に認められ、眼窩下動静脈や眼窩下神経が通ります。通常は、1個認められますが、稀に複数存在する場合があり、副眼窩下孔と呼ばれます。
*( )内は、Berry & Berry (1967)の番号
●前篩骨孔(縫合外)[Anterior ethmoid foramen exsutural](No.28)
前篩骨孔は、眼窩内に認められ、通常は縫合上に位置しますが、稀に、縫合の外に位置する場合があります。
●後篩骨孔[Posterior ethmoid foramen absent](No.29)
後篩骨孔は、通常、縫合上で前篩骨孔の後方に位置しますが、稀に欠損している場合があります。
*( )内は、Berry & Berry (1967)の番号
●プテリオン骨[Epipteric bone present](No,8)
プテリオン骨は、側頭骨と蝶形骨の大翼との間に認められる場合があります。
●頭頂切痕骨[Parietal notch bone present](No.10)
頭頂切痕骨は、頭頂骨の一部で、側頭骨の鱗部と乳突部との間に認められる場合があります。
●アステリオン骨[Ossicle at asterion](No.11)
アステリオン骨は、頭頂骨・側頭骨・後頭骨に挟まれた部分に認められる場合があります。
●外耳道骨腫[Auditory torus present](No.12)
外耳道骨腫は、外耳道に認められる場合があります。
●乳突孔[Mastoid foramen exsutural](No.14)
乳突孔は側頭骨にあり、乳突導出動脈が通りますが、縫合の外に位置する場合があります。
*( )内は、Berry & Berry (1967)の番号
●最上項線[Highest nuchal line present](No.1)
後頭骨には、上項線と下項線とがあり、それらは水平に位置します。稀に、最上項線が認められる場合があります。
●ラムダ小骨[Ossicle at the lambda](No.2)
ラムダ小骨は、矢状縫合とラムダ縫合とが交わる部分に認められる場合があります。別名、「インカ骨」とも呼ばれます。
●ラムダ縫合小骨[Lambdoid ossicles present](No.3)
ラムダ縫合小骨は、稀にラムダ縫合部に1つあるいはそれ以上の小骨が認められる場合があります。
●舌下神経管二分[Anterior condylar canal double](No.19)
舌下神経管は、舌下神経や静脈叢が通ります。この神経管は、1つの場合が多いのですが、稀に、2つに分かれている場合があります。
*( )内は、Berry & Berry (1967)の番号
●頭頂孔[Parietal foramen present](No.4)
頭頂孔は、矢状縫合の近く、ラムダの数センチ前に認められる場合があります。
●ブレグマ骨[Bregmatic bone present](No.5)
ブレグマ骨は、冠状縫合と矢状縫合とが交わる部分である、ブレグマ部に認められる場合があります。
●冠状縫合小骨[Coronal ossicle present](No.7)
冠状縫合小骨は、稀に、冠状縫合部に認められる場合があります。
*( )内は、Berry & Berry (1967)の番号
●フシュケ孔[Foramen of Huschke present](No,13)
フシュケ孔は、側頭骨の鼓室骨に認められる孔です。この孔は、子供の時には必ず認められるものですが、約5歳をすぎると閉鎖します。しかし、何らかの理由でそのまま孔が残る場合もあります。
●顆管開存[Posterior condylar canal patent](No.16)
顆管は、顆導出静脈が通ります。稀に、この顆管ふさがっている場合も認められます。
●後頭顆二分[Condylar facet double](No.17)
後頭顆は、稀に2つに分かれている場合があります。
●前顆結節[Precondylar tubercle present](No.18)
前顆結節は、後頭顆の前に認められる場合があります。なお、大後頭口の前部中央にある場合は、第三後頭顆と呼ばれます。
●卵円孔棘孔連続[Foramen ovale incomplete](No.20)
卵円孔は、下顎神経が通ります。また、棘孔は中硬膜動脈と下顎神経の硬膜枝が通ります。この卵円孔と棘孔は、通常、それぞれが独立して孔を形成していますが、稀にこの2つがつながって連続している場合が認められます。
●棘孔開放[Foramen spinosum open](No.21)
棘孔は、中硬膜動脈と下顎神経の硬膜枝が通ります。通常、独立した孔になっていますが、稀に、孔を形成せずに開放されている場合が認められます。
●副小口蓋孔[Accessory lesser palatine foramen present](No.22)
口蓋孔は、口蓋骨の後部の左右にあります。この口蓋孔には、大口蓋孔と小口蓋孔があり、大口蓋孔には大口蓋神経と大口蓋動脈が通り、小口蓋孔には小口蓋神経と小口蓋動脈が通ります。通常、それぞれ1つずつですが、小口蓋孔の場合、稀に3つあるいは4つある場合があり、副小口蓋孔と呼ばれます。