◆左右差:四肢骨
人の腕や足が左右非対称であることは、良く知られています。例えば、テニス選手は利き手側の腕がそうでない側よりも長いことが知られています。理由は、利き手を良く使うからだと説明されています。
ちなみに、世界中の利き手の調査では、右手利きが約90%で左手利きが約10%だというデータがあります。左手利きは、男性に多く女性に少ない傾向があるそうです。また、国内における利き足の調査では、右足利きは男性で約61%・女性で約71%というデータがあります。
ここでは、現代人骨と遺跡出土人骨の四肢骨の左右差を研究した、元北里大学の平本嘉助さんの研究をご紹介します。
◆上肢骨
上肢骨の上腕骨・橈骨・尺骨では、すべての時代及び性別で、右の方が左よりも長いという傾向が認められます。恐らく、利き腕が右だったからだと推定されます。
*現代日本人骨1は関東地方人・現代日本人骨2は近畿地方人を指します。
●上腕骨[最大長]
男性(♂)
縄文時代人骨1[25例]: 右・293.28mm > 左・290.92mm
縄文時代人骨2[39例]: 右・288.10mm > 左・286.51mm
江戸時代人骨 [21例]: 右・292.05mm > 左・289.19mm
現代日本人骨1[70例]: 右・292.89mm > 左・290.06mm
現代日本人骨2[30例]: 右・294.13mm > 左・292.53mm
女性(♀)
縄文時代人骨1[15例]: 右・273.40mm > 左・269.53mm
縄文時代人骨2[28例]: 右・272.07mm > 左・267.28mm
江戸時代人骨 [4例]: 右・263.75mm > 左・260.00mm
現代日本人骨1[45例]: 右・270.11mm > 左・266.89mm
現代日本人骨2[70例]: 右・273.90mm > 左・270.70mm
●橈骨[最大長]
男性(♂)
縄文時代人骨1[16例]: 右・233.50mm > 左・232.62mm
縄文時代人骨2[39例]: 右・233.10mm > 左・231.36mm
江戸時代人骨 [32例]: 右・223.69mm > 左・222.34mm
現代日本人骨1[70例]: 右・220.76mm > 左・219.57mm
現代日本人骨2[30例]: 右・223.10mm > 左・222.47mm
女性(♀)
縄文時代人骨1[21例]: 右・215.47mm > 左・213.24mm
縄文時代人骨2[28例]: 右・212.43mm > 左・209.36mm
江戸時代人骨 [7例]: 右・199.57mm > 左・197.29mm
現代日本人骨1[45例]: 右・200.49mm > 左・198.58mm
現代日本人骨2[20例]: 右・201.25mm > 左・198.65mm
●尺骨[最大長]
男性(♂)
縄文時代人骨1 [9例]: 右・253.78mm > 左・252.78mm
縄文時代人骨2[22例]: 右・252.09mm > 左・250.23mm
江戸時代人骨 [25例]: 右・242.80mm > 左・241.12mm
現代日本人骨1[70例]: 右・238.40mm > 左・236.64mm
現代日本人骨2[30例]: 右・239.20mm > 左・238.30mm
女性(♀)
縄文時代人骨1 [6例]: 右・240.17mm > 左・237.67mm
縄文時代人骨2[25例]: 右・229.52mm > 左・226.00mm
江戸時代人骨 [6例]: 右・214.83mm > 左・212.00mm
現代日本人骨1[45例]: 右・217.85mm > 左・215.29mm
現代日本人骨2[20例]: 右・217.85mm > 左・215.60mm
◆下肢骨
下肢骨の大腿骨・脛骨では、すべての時代及び性別で左の方が右よりも長いという傾向が認められます。恐らく、利き足では無い側の左が長くなっているためと推定されます。
●大腿骨[最大長]
男性(♂)
縄文時代人骨1[19例]: 右・421.58mm < 左・422.21mm
縄文時代人骨2[37例]: 右・420.62mm < 左・422.62mm
現代日本人骨 [30例]: 右・413.67mm < 左・413.90mm
女性(♀)
縄文時代人骨1[13例]: 右・394.46mm < 左・395.77mm
縄文時代人骨2[29例]: 右・385.21mm < 左・386.55mm
現代日本人骨 [18例]: 右・384.61mm < 左・384.67mm
●脛骨[最大長]
男性(♂)
縄文時代人骨1[15例]: 右・343.27mm < 左・344.07mm
縄文時代人骨2[30例]: 右・348.83mm < 左・349.93mm
現代日本人骨 [30例]: 右・331.93mm < 左・332.00mm
女性(♀)
縄文時代人骨1[16例]: 右・325.63mm < 左・326.69mm
縄文時代人骨2[22例]: 右・324.59mm < 左・325.55mm
現代日本人骨 [20例]: 右・305.05mm < 左・305.10mm
●平本(1993)
平本嘉助
1993年
『Anthropological Science』
第101巻
第5号
pp.473-481
*上腕骨・橈骨・尺骨の長さの左右差を検証しています。
リンク:J-STAGEのフリーアクセスにリンクさせています。
●平本(1993)
平本嘉助
1993年
「Right-Left Differences in the Length of Human Arm and Leg Bones」
(ヒトの上・下肢骨最大長の左右差)
『Acta Anatomica Nipponica(解剖学雑誌)』
第68巻
第5号
pp.536-543
*上腕骨・橈骨・大腿骨・脛骨の長さの左右差を検証しています。